本論は、クロード・モネの作品において水面に映った鏡像の表現方法がどのように変遷したかについて考察するものである。 第1章では、モネの作品についてまとめた画集『Monet or the Triumph of Impressionism』の掲載作品572点をもとに、水面が描写された154点を抽出し、以下の3グループに分けた。
[グループ1]鏡像が描かれていない(64作品)
[グループ2]鏡像が連続面を持っている(63作品)
[グループ3]鏡像が筆触で分割されている(27作品)
石内都の3つの作品、《motherʼs》《ひろしま》《Frida by Ishiuchi》で撮られた衣服たちはどれも遺品である。これら「石内都の3つの衣服」には、死者たちの「痛み」と共に、残された者たちの「心の痛み」など数種の痛みが宿っている。そして写された衣服たちは、見る者に「痛みの記憶」を想起させる。その3つの衣服たちは、遺品であるということで同じ「痛み」が表現され、我々にも同じ「痛み」を想起させるのだろうか。
本論は、「石内都の3つの衣服」それぞれの衣服を「痛みの視点」から読み解き、相違と重なりを見つけようという試みである。この試みは、視覚芸術で頻繁に扱われるテーマである「痛み」とのひとりの作家の対峙の仕方やその変化を検証することにもなった。誰もが持つ無意識の「母胎から出た時の痛みの記憶」まで遡ることで、作品が揺り動かす共通の「痛みの記憶」を発見した。視覚芸術を媒介とした「痛みの授受」とでもいう作用の理解に少しでも近づこうという研究である。
美術館・博物館に展示されているモノとしての文化財に興味がない大人でも、作家の人生などの蘊蓄には興味を持つ人が多い。モノのメタ情報である「目に見えない価値」が、大人の知的好奇心を目覚めさせているのである。現在、大量にデジタルアーカイブ化されているメタ情報を、インフォグラフィックス(情報の可視化)技術を用いて、魅力的なアートコンテンツとして提供すれば、忙しい大人が、日常に近い場所で美術作品に出会う場を演出できると考えた。そこで、最近のコンピュータグラフィックス系のアートフェスタの多くに見られるイベント形式を参考に、複数で批評しながら、メタ情報から構築されたアートコンテンツを楽しむ場「メタ・ミュージアム・シアター」を提案した。美術館内の文化財資料がデジタル化されて、参加型の展示となれば、忙しい大人の日常生活のSpice of Life のひとつとなるであろう。このような仕掛けは、文化支援のひとつの有効な手法となると信じている。