芸術文化学科 芸術研究コース

歴史や理論からアートを知的に探究する、
真摯な研究者、優れた鑑賞者を育てる。

展覧会やイベントなど、アートはますます身近になっています。またテレビや書籍、WebサイトやSNSなどでアートの情報が手軽に、大量に得られるようになっています。その反面、人気のアート作品の魅力が分からなかったり、専門家の評価に従うだけで自分なりの見方ができていないと感じることもあります。

アートの楽しみは、そうした状態から一歩前へ出て自分の視点で作品を捉え、発見を引き出し、それを人に伝えて共有することで、より広く、深いものになっていきます。

芸術研究コースは、見て、自由に感じて楽しむアートを、文化の所産として知的に理解し探究する対象として捉えます。アートについて調べ、疑問をもって主体的に考え、その成果を他者が理解できるよう客観的に表すための視点と方法を、体系的に学ぶコースです。

コースのカリキュラムは、造形を中心に芸術文化を研究するための基本的な知識と能力を養う目的で、通信授業とメディア授業によって構成されています。

「芸術研究学」では造形に対する私たちの認識の成り立ちを、言語表現から社会制度までを視野に入れて学びます。

「芸術研究リサーチ」「芸術研究コンセプション」「芸術研究ライティング」は、研究の方法論を学ぶ科目です。造形に関する情報の探索と分析の方法、調査・観察で得た気づきや情報を整理して問題発見から仮説・推論を組み立てていくまでの思考トレーニング、造形について語り他者に伝える際の課題や手法を段階的に学びます。

「芸術研究特殊講義」は特定テーマによるゼミナール形式の科目です。設定された課題について各受講者の持つ知見を共有しながら、造形に対する幅広く柔軟な見方を養います。

「卒業研究」では、自分で立てたテーマに基づいて、芸術文化に関する研究に取り組みます。

卒業制作論文をご紹介。

狩野探幽の鳥ー時を表現する幽微ー
2017年度卒業制作論文

狩野探幽が求めた「幽微」とは

「幽微を探らざれば、その奥に至りがたし」これは、号”探幽斎“の由来とされる一節だ。探幽が求めた「幽微」とは、 どのようなものだったのか。「鳥」の表現には、 空間構成による主題の明確化があり、動的表現による時間と情緒がある……。 そこには、少なからず中世から近世へと移り変わる 時代性も映し込まれているのだ。

卒業制作論文概要

狩野派を「一変」したともされる狩野探幽は、画風は淡麗瀟洒、余白を生かした画面に特徴があるとされてきたが、果たして彼の作品的な特徴はそれだけであろうか。激動の時代に身を置き、長きにわたって江戸幕府の中枢で活躍することとなった御用絵師と、その変化していった画風。本研究では、探幽の描いた「鳥」をテーマに、狩野派として受け継がれる技術のみならず、作品における情緒的な特徴を捉え、新たな視点を見つけ出そうと考えたものである。狩野探幽が生きたのは、中世から近世へと移り変わる激動期であり、江戸幕府がその権力を確立していく時代である。京の公家衆の掌握を強く意識した幕府の文化政策や、大徳寺や茶の湯とのかかわり、他派の絵師との交流など、狩野派の流れだけでなく多角的に探幽の置かれた立場とその背景を考察することから、作品がその時代性を少なからず表していることを浮き彫りにしつつ、なかでも日本的な表現を感じさせる「鳥」の描き方から、探幽個人が求めた「幽微」の一端に迫る。

小林さやか

2017年度卒業

タイ寺院壁画の場面配置特性を探る ー19世紀から20世紀にラーンナー地方で描かれたジャータカ第547話を中心にー
2016年度卒業制作論文

タイ寺院で見た壁画の謎を解く

タイ北部ラーンナー地方の寺院で見た釈迦前世物語の壁画。物語の進行を無視して場面展開されている。一体なぜなのか。謎を解くために、タイ語を学び、タイ美術の文献を漁り、三寺院の壁画を採寸して写真に撮り、分析を進めた。やがて、一見するとランダムな場面展開が、限られた壁面内で善業功徳や因果応報を絵解きするための、合理的な配置であることが明らかになってくる……。

卒業制作論文概要

本論文は、タイの仏教寺院壁画に表現された仏教説話「ジャータカ第547話」の場面配置の特性を探るものである。547話は物語仕立てになっているが、その物語に則して壁画を「読んで」みると、物語の進行を無視しててんでばらばらに場面が配置されているように見える。なぜ、そのような場面配置になっているのか。タイを訪れて、壁画を前にした時に抱いた疑問の答えを探るのが目的である。 対象とする範囲は、壁画の制作年代を19世紀後半から20世紀初頭、地域をラーンナー地方(北部タイ)とした。 三つの寺院を事例としたにとどまったが、地域と制作年代を限定したことに加えて、タイ人の人口に膾炙した「547話」を分析対象にしたことによって、場面配置の特性が明確になったと考える。 出発点はごく個人的な疑問であったが、結果としてある程度一般化できそうな答えが得られた。それは本文の通りであるが、かいつまんで言えば、ばらばらの裏には幾つもの合理性があったのである。

青木慶太

2016年度卒業

芸術研究コースの学習領域

芸術研究コース学習プロセス

芸術研究コースの履修モデル

1年次

文化総合科目
文化総合科目から自由に選択 … 15単位
造形総合科目
造形総合科目から自由に選択 … 10単位
学科別専門科目
芸術研究学I … 2単位
芸術研究リサーチ … 2単位
芸術研究特殊講義I … 1単位

2年次

文化総合科目
文化総合科目から自由に選択 … 13単位
造形総合科目
造形総合科目から自由に選択 … 14単位
学科別専門科目
芸術研究学II … 2単位
芸術研究コンセプション … 2単位
芸術研究特殊講義II … 1単位

3年次

文化総合科目
文化総合科目から自由に選択 … 14単位
造形総合科目
造形総合科目から自由に選択 … 8単位
学科別専門科目
芸術研究学III … 2単位
芸術研究ライティング … 2単位
芸術研究特殊講義III … 1単位
卒業研究I … 2単位
ミュゼオロジーI … 1単位・1単位

4年次

文化総合科目
文化総合科目から自由に選択 … 12単位
造形総合科目
造形総合科目から自由に選択 … 8単位
学科別専門科目
芸術研究学IV … 2単位
芸術研究特殊講義IV … 1単位
卒業研究II … 2単位
卒業研究III … 2単位
ミュゼオロジーII … 4単位

  • は必修科目、は選択必修科目
  • 上記のほかに、文化総合科目(自由選択)を卒業までに40単位修得する。

芸術研究コースのスクーリング。
教員や仲間との交流がよい刺激に。

造形基礎ⅢB

ブックバインディング

映像メディア表現Ⅰ

芸術研究コースの卒業までの学費例をシミュレーション。

入学時には選考料・入学金、卒業までには授業料のほか、スクーリングやメディア授業の受講料等が必要です。スクーリングまたはメディア授業は卒業までに30単位の修得が必要になるため、年間平均で7~8単位のスクーリングまたはメディア授業を受講することになります。最短で卒業した場合、学費の概算は下表のとおりです。

1年次入学の場合

年次 選考料・入学金 授業料 スクリーング受講料
メディア授業受講料
合計
1年次 25,000円 + 30,000円 330,000円 13,000円 × 3単位
10,000円 × 7単位
494,000円
2年次 330,000円 15,000円 × 6単位
12,000円 × 3単位
456,000円
3年次 330,000円 15,000円 × 1単位
12,000円 × 5単位
405,000円
4年次 330,000円 12,000円 × 5単位 390,000円
1,745,000円

2年次編入学の場合

年次 選考料・入学金 授業料 スクリーング受講料
メディア授業受講料
合計
2年次 25,000円 + 30,000円 330,000円 10,000円 × 6単位 445,000円
3年次 330,000円 15,000円 × 1単位
12,000円 × 5単位
405,000円
4年次 330,000円 12,000円 × 5単位 390,000円
1,240,000円

3年次編入学の場合

年次 選考料・入学金 授業料 スクリーング受講料
メディア授業受講料
合計
3年次 25,000円 + 30,000円 330,000円 13,000円 × 1単位
10,000円 × 8単位
478,000円
4年次 330,000円 12,000円 × 8単位 426,000円
904,000円
  • 2年次編入学・3年次編入学の例は、入学時に既修得単位をスクーリングによる単位として認定された場合です。
  • 受講する科目によっては別途教材費がかかるものもあります。
  • 不合格によりスクーリング再受講となった場合、新たに同一の受講料(2025年度以降は改定後の受講料)・申込みが必要です。
  • 参考図書等の購入代金・材料費・課題の郵送料等は含まれません。