本稿では、米製作映画『アラバマ物語』(To Kill a Mockingbird,1962)における主人公描写を映像表現から分析する。ハーパー・リー(Nelle Harper Lee, 1926-2016)の『To Kill a Mockingbird』(1960)を映像化した本作にて、主人公がどのように描写されているのかを映像分析から詳らかにすることが本稿の目的である。まず、『アラバマ物語』の全体の構成と劇中での三幕構成を確認し、幕毎の主人公の基本的な描写のされ方について概観する。次に、全体を通した展開および幕毎の描写の差異に着目し、そこから見えてくる主人公描写についてプロット毎に検討する。特に、主人公は三幕構成に従って変化しながら描かれているという映像作品に特徴的な点に着目し、主人公の劇中での描かれ方とその変化について分析を行う。そして、本作での主人公描写にはプロット毎に差異があり、二重性をもって描写されているという点を考察する。最終的に『アラバマ物語』の主人公は、弁護士描写と父親描写との二重性をもって描かれているという結論を提示する。