彫刻刀は研ぎながら使う習慣をつけるべきで、全く切れなくなったものを切れるように整えるのは容易な事ではない。研ぎには機械で研ぐ方法と、手で研ぐ方法の2種類がある。自ら手で研ぐ方法を身につけるのが一番で、それ以外は専門の業者に依頼するのが望ましい。
 彫る場合には、仕上げ砥を必ず側に置いて刃の状態を確認しながら進めるのが理想的で、仕上げ砥だけは整えておきたい。
 錆びがでないように注意することも大切である。研ぎに水を使うので、木製の柄が濡れた時などは良く乾燥させなければならない。また手の汗で柄がぐっしょり濡れることもあるので、バトミントンのグリップテープを巻いたり、ラッカー塗料を塗ったりして工夫が必要となる。
 保管時に注意する事は湿気や水分をさけるのはもちろんのこと、危険な道具なので散乱しないようしっかりと管理する必要がある。
 砥石を使って彫刻刀を研ぐと、どうしても砥石に溝が生まれてしまう。放っておくと溝だらけになるから、同じ細かさの砥石どうしをこすり合わして時々平坦にしてやると良い。
 砥石がない場合には、耐水ペーパーを使うと良い。砥石によって違いはあるが、荒砥の場合240番、中砥の場合600〜1000番、仕上げ砥の場合1200〜2000番くらいである。平らな板に耐水ペーパーをしっかりと貼り込み、充分に水を与えながら行う。
 刷毛の製造元で、刷毛はやたらにあらうものではないなどと忠告を受けるが、版画の場合そんな訳にはいかない。
 水分だけ含んでる場合には水を良く切るだけで良いのだが、絵の具を含んでいる場合には少量の石けんを用いた方が作業効率も良く、複雑な組成の絵の具を洗い流すのに適している。
 基本的には水洗いを主とするため、洗浄後は良く振って水分を根元から完全に除くべきである。乾燥は陰干しに限り、保管には防虫剤を添える。
 バレンの手入れといっても、その種類によって様々な様相を示す。代表的なものでは、竹皮(当て皮)の張り替えであろう。
 はじめから上手に張ることは難しいが5枚6枚と度重ねることによって様になってくる。専門店に依頼することも可能なので、専門家が張ったものを次の張り替え時に捨てずに保管しておくと、とても参考になる。美しく張られた竹皮の内側を観察して、張る時の手の動きを想像するとよいだろう。
 どちらにしろ必要に迫られるので、竹皮だけでも手元に置いておくべきだ。また、内側のツナについては、特別傷んでいたり、でこぼこが生まれたりしていないか確認して適宜修正を加えれば良い。
 ボールバレンでは、ベアリングの動きが著しく損なわれない限り継続して使う事が出来る。メンテナンスが必要な時は、摩滅を原因とする部品等の交換修理になる場合が多い。
 竹皮のバレンには椿油を用いる。厚めのフェルト生地を、使用するバレンより少し大きめにカットして椿油を適度に含ませる。
 摺る時にフェルトをバレンでこするようにして、竹皮の滑りが悪くならないよう補充しながら作業をする。ボールバレンの場合は、椿油ではなく金属用潤滑油を使用する。
摺りのテクニック