■用具解説:
■コンテ・パステルによる描画例:
■参考作例:
コンテ:
コンテ社のコンテの他にカーボンチョークなど数社のコンテがある。
ソフトパステル:
長さの違いや色味の違い、国産、ヨーロッパ製など数多くある。形の不揃いな手練りのものもある。最近ではデッサン用の色味を選んだセットもある
ハードパステル:
ハード、セミハードなど硬さ、柔らかさ、色味により種類がある。ソフトパステルと併用することも出来る。
フィクサチーフ(ソフトパステル用):
固着力の弱いパステルは画面保護のためフィクサチーフを使う。ソフトパステルの艶消しの発色を損なわないよう専用のフィクサチーフを使うとよい。かけ過ぎに注意したい。
ぼかし筆:
パステル専用の柔らかい筆がある。毛先の短い豚毛のものや地塗り筆、歯ブラシなど好みにより工夫するとよい。
クレヨン:
子供用の他に幼児用のものもある。ワックスが強く無害な顔料が使用されている。
擦筆:
パステルやコンテを紙に擦り込んだり、ぼかすのに使う。綿棒やガーゼなどいろいろと試したい。
コンテ:混色1
コンテ:混色3
コンテ:混色2
オイルパステル:線
ソフトパステル:グラデーション1
ソフトパステル:グラデーション2
ソフトパステル:グラデーション3
ソフトパステル:混色1
ソフトパステル:混色2
ソフトパステル:混色3
●コンテによる描画例
●ソフトパステルによる描画例
●オイルパステルによる描画例
コンテ・パステル・クレヨン
材料と用具描画材
 フランス語でクレヨン(crayon)とは鉛筆を指すが,広義には棒状固形筆記具の総称である。その語源は白亜(※1)のクレイ(craie)からきている。
 現在のコンテや鉛筆、パステルやクレヨンなどは大雑把見ると同種であり、ヨーロッパの描画材の歴史とともに種別され枝別れしたといえる。
※1:
白亜とは海中の微生物や貝殻による堆積岩で白墨や石灰の原料である。炭酸カルシウムのひとつである。
●描画材:コンテについて
 土や鉱物を主原料とするコンテは、主に黒、褐色、白、などがある。(※2)黒は石墨で炭素を多く含む。褐色はサンギン(sanguine)と呼ばれ鉄分を多く含む。(※3)白は白墨で、白亜や石膏などを混ぜて固めたものとされる。
※2:
紙の地色を生かし、陰影部に黒や褐色、ハイライト部に白を使って描く方法がある。三色のデッサンをトロワ・クレヨン(trois crayons)、二色のものをドゥ・クレヨン(deux crayons)と呼ぶ。
 天然産の鉱物は不純物が多く、その純度を高めるため固形物を一端粉末にし(顔料化)選り分けて混ぜ物を施し焼成する。鉛筆の発案者であるニコラ・ジャック・コンテは、棒状の固形描画材の製法を発展させ、自社製品として売り出した。これがコンテの由来である。デッサンで使用する細くて四角いコンテは石墨やチョークの代名詞として位置付けられている。 ※3:
 レオナルド・ダ・ヴィンチはチョークによる素描を確立した、と言われるが褐色による柔らかい調子の素描が多くある。
●描画材:パステルについて
 パステルの語源は「練り物」であるパテ(Pate)で、英語のペースト(Paste)と同義である。粉末の顔料をメディウムで練り、押し固める所からの由来である。17世紀に作られた。(※4)
 使用されるメディウムはトラガカントゴムが主である。パステルはメディウムが少なく、固着力が弱いところが特徴である。土を手で練って固めたような素朴な製法はまさに顔料の塊のようである。線による描写も可能であるが、手や布、擦筆などを使ったぼかしによる調子の表現に優れている。
コンテ:指で押さえる
ソフトパステル:描画
コンテ:描画
ソフトパステル:描画
ソフトパステル:描画
コンテ:描画
オイルパステル:描画
オイルパステル:描画
参考作例として通信教育課程の学生及び卒業生の方々の作品写真を使わせていただきました。
オイルパステル:
新製品が多くある。メーカーにより柔らかさや発色が違う。
クレヨン、オイルパステル用保護スプレー:
不乾性油が使用されているオイルパステルは作品の表面がべたつく。専用の保護スプレーは表面のべたつきや粘りを抑える。

キャンソン ミ・タンド紙

マーメード・リップル 超特厚口

キャンソン ミ・タント
ソフトパステルを塗った効果比較

アングル紙

ワトソン紙 超特厚口

クラシコファブリアーノ 荒目
オイルパステルの支持体
 オイルパステルは柔らかく固着力があるので特に専用の支持体(紙)を必要としない。凹凸のある紙や滑面の紙など好みにより使える。表面の艶や柔らかい描感を意識すると凹凸の少ないケント紙や模造紙、TMKポスター紙など細目の画用紙などが向いているであろうか。
●描画材:支持体について
コンテ、パステルの支持体
 コンテやパステルは固着力が弱く顔料の粒状性が強い素材なので、指で擦るとベタ塗りに成りがちである。そのため凹凸のある紙が使い易い。アングル紙は木炭紙のようなスノコ目があり、コンテやパステルの専用紙である。スノコ目を模した薄手のクロッキーブックも使い勝手は良い。また有色下地であるキャンソン ミ・タント(カラーペーパー)などを使うのもよい。その他に水彩紙では凹凸のある荒目のものが使い易いであろうか。
 パステルが水性メディウムを使うのに対して、クレヨンやオイルパステルは油性メディウムを使う。
 画材として一般的なクレヨンは、顔料に植物油とワックスを混ぜて作られる。クレヨンの歴史は古く、16世紀のイタリアではすでに使用されていたとされる。現在日本に伝わるクレヨンとは、多くのワックスを使ったアメリカ産クレヨンによる。
 クレヨンは、ワックスの耐久性の問題や技術的な面に限りがあることなど、専門家用の画材としてはあまり普及しなかった。とても手軽に使える利点から、児童画用の描画材として世界的に普及し定着する。(※6)
 クレヨンを改良し、油性による艶と適度な柔らかさを持たせたものをオイルパステルと呼ぶ。日本製のクレパスもオイルパステルに含まれる。メーカーにより違いはあるが粘りがあり、鮮やかな発色で、画面上での混色が容易である。クロッキーなど直感的な仕事に適した扱い易い描画材である。また柔らかいタイプのものは適度な圧塗りが出来る。油性分が強いので長期保存を前提とする場合は支持体に目止めがあるとよい。
※:
描画材と支持体の組み合わせにより素材の生かし方や描感は大きく変化する。またそれ自体が表現と密接に関わる重要性をもつ。一般的な相性や組み合わせに縛られず自分の好みに合う支持体を探したい
※5:
 各メーカーにより違いはあるが、200種類から500種類ほどの色数が揃う。顔料に白色顔料を混ぜて作られる中間色が豊富に揃う。

※6:
クレヨンのワックスによる特質として、光沢のある紙や金属、ビニール、アクリルなど滑面の支持体に上手く描ける。色鉛筆やダーマトグラフなどはこの特質をいかした筆記具である。
●描画材:クレヨンとオイルパステルについて
コンテ:グラデーション
(アングル紙)
コンテ:グラデーション3
(アングル紙)
コンテ:グラデーション2
(アングル紙)
オイルパステル:グラデーション1
(ファブリアーノクラシコ5細目)
オイルパステル:グラデーション2
(ファブリアーノクラシコ5細目)
オイルパステル:グラデーション3
(ファブリアーノクラシコ5細目)
オイルパステル:混色(画仙紙)
オイルパステル:混色(画仙紙)
オイルパステル:混色(画仙紙)
※4:
 パステルが普及するのはロココの時代である。
 また色彩の混色に限りがあるため、多くの種類の色が用意されている。パステルトーンと呼ばれる所以である。(※5)パステルの種類はメディウムの濃度の違いにより硬さの違うソフトとハードがある。ソフトパステルは種類も豊富で歴史がある。パステルの代名詞でもある。