木版画における色彩の確認は、摺ってみないとわからないところがある。しかも、状況による変化も大きく出るから、途中段階でのデータ取りは困難である。
紙に摺った状態は作品や試刷りに残せるので問題ないが、混色して作り出した色彩は、摺る前と後に作った色と変化した色に関しての記述と色のサンプルを一定の条件のもとで記録する必要がある。
同じ名称の色でも、水彩絵の具、ガッシュ、ポスターカラーでは少し発色の仕方が異なる。
また、同じ名称の色でもメーカーによって色相にズレがあるから、色の名前、メーカー名を控えておかねば、その後の同じ混色は不可能になる。
絵の具(水性)をのばす大きな目的は、版面で均一な色材の分布を得ることである。
そのためには、版(版木)に適度な湿り気を与える必要がある。版の湿り気が不十分だと、色材に含まれる水分が版木に吸収され、表面で色の粒子が動かなくなってしまう。これが、摺りムラになる原因の一つである。
また、刷毛の動かし方も重要で、ただ動かせばよい訳ではない。摺りながらも版の湿り気は奪われ続けるから、絵の具をのばす目的とともに版の湿り方も均一に整える役割が刷毛の動かし方にある。よって版全面を短時間で整えるように効率良く動かさなければならないし、摺る面積によって刷毛の大きさも考慮しなければならない。
水性の板目木版画は、大きく気候の影響を受ける。特に、大気が乾燥している時などは、紙や版面が乾きやすくて摺りが困難な場合がある。暖房や冷房の効いた室内では、さらに困難を極める。逆に、湿り気のある梅雨時期は、比較的作業しやすい。
対処法としては、通常よりも使用する水分を多めに扱うこと。また、加湿器を使って少しでも乾燥を遅らせること。加湿器と合わせて、霧の細かな霧吹きを併用すると、摺りの作業効率はよくなると思う。