烏口は2枚の口先の隙間を、ネジで調整して絵の具やインキで均一な線を引くための製図器である。
 基本的にはインキ・絵の具の充填後に線の太さをネジを回して調整する。

洗浄と充填:
 口先の洗浄は線を引く度に行うのは大変だが、乾燥具合を見て、できるだけ良いコンディションで使いたい。乾燥したかすが付いてくると線がかすれたりし、汚くなる。
 充填時も内側だけにインキや絵の具を注すようにする。絵の具皿に直接入れるなど言語道断で、周りを汚さないようにしなければならない。定規などを汚すだけでなく、紙と定規の隙間にしみ出してしまい、図面を台無しにしてしまうからである。
 基本的には鉛筆で線を引く時と同様であるが、口先が2枚ともぴったり紙に接するように、より注意深く使い、シャープな線を引く。
 直線だけでなくコンパスに付けた烏口でも同様で、半径を取る時に烏口が垂直になるように注意すること。
 長い線を引く時にはたくさんインキや絵の具を入れがちであるが、自重によりたれてしまうことがあるので注意が必要である。
 長い線だけでなく、弧との接続でも、つなぐ位置や描く手順を先に組み立ててから使う。
 線を引くスピードも重要である。一定スピードで引くこと。特に線の描き出しと描き終わりには細心の注意が必要である。紙の上に置いたら直ぐに動かすこと。描き終わりでは線を引く位置より少し手前で終えないとはみ出すことが多い。表面張力で膨らんでいる分だけ烏口の接点より先までインキや絵の具が紙に付着するからである。
 烏口はステンレスでできているとはいえ、使っていくうちにすり減ってくるし、新品でも口先を研磨し、調整してから使う方がきれいな線を引くことができる。
 「オイルストーン(砥石)」に「器械油」を数滴垂らしてから、研いでいく。
 ネジを閉めて調整し、口先をぴったり合わせてから8の字のように動かし、両面をしっかりと研磨する。2枚の口先がぴったり揃うように仕上げる。
 内側は数回だけ砥石に面をぴったり当てて擦り、外側からの返りを落とすだけで仕上げる。
 電動消しゴムで字消し板の上からごしごし消したり、カッターの刃でガリガリと修正部分のインキをそぎ落とすと、ケント紙など製図用紙の表面が痛んでしまう。きれいに消えたとしても、光の反射によって部分的に目立ってしまう。
 そこで安全カミソリの刃だけを両手で持ち、曲げて紙の表面だけを薄く剥き取る方法を用いる。線の不要部分(両端)を先に紙の表面だけきっておくのがコツで、その後から剥き取ると紙を傷めないできれいな修正が可能になる。
インキの充填:
 充填後すぐに図面に使わず、インキ・絵の具の出方や太さなどの調整や確認するため、別紙で試し書きをする。その時外側に着いてしまったインキや絵の具もティッシュなどで拭き取る
 確認後はすぐに図面に使わないと口先から乾燥が始まり、作業中でも出なくなったり、かすれてしまうので注意する。