版画を刷る時に、版のイメージ画面に対して紙の置かれる位置を指定する色ズレ防止の目印を見当と呼ぶ。多色刷りの時は、各版に同様な目印を設ける。
木版画で使うものはカギ見当と呼ばれ、錦絵の時代から使われている。銅版画では針見当、リトグラフではT字見当、シルクスクリーンではトンボ見当、オフセット印刷ではトリムマークなど、版種によって様々な種類がある。
木版画では以下の2カ所を、彫刻刀で直接刻み込んで作る。
カギ見当:
版画紙の右下の角をあてがうための見当。直角になっていて、紙の厚み分だけ彫刻刀で彫り下げる。
引きつけ見当:
版画紙の底辺をあてがうための見当で、版画紙の左端から紙の底辺の3分の1の距離に底辺と平行に彫刻刀で紙の厚み分だけ刻み付ける。
内見当と外見当:
右上の写真は、カギ見当である。画面と同一板上に、カギ見当と引きつけ見当を設けるのを内見当と呼ぶ。画面とは別の板に見当を設けるのを外見当と呼ぶ。
銅版画は、ベットプレートの上に版、版画紙の順にのせる。版画紙をのせる時、版の位置を確認出来ないので、透明なフィルムに版と版画紙の位置を示す見当を作っておく。条件を整えれば、多色刷りでも充分に精度を得ることは出来る。
針見当:
多色刷りを行う時に用いる見当。リトグラフの多色刷りにも、用いられる場合がある。画面を中心として、画面の長辺の左右に針と合わせるポイントを2カ所プレートマークに設ける。軽量かつ剛性のある棒を用意し、ポイント間の距離と同じ距離に針を固定する。版画紙は、この2つの針によって固定され、2つのポイントにあてがわれる。但し、プレートマークと版画紙には、針による傷が残る。
T字見当:
リトグラフの見当は、版に直接ニードルでキズを付ける。
印刷を想定し、版に版画紙を置いた状態でイメージ画面の長辺を下にする。この時イメージ画面の短辺が縦になっており、その短辺を真っ直ぐ垂直に下ろして版画紙の底辺と交わる位置を見当とする。
その接点を基準にして、版画紙の方には薄い鉛筆で数字の1のように目印を付ける。
アルミ板の方にはアルファベット大文字のTの字のように、横線は版画紙の底辺に平行、縦線は画面の短辺の下方延長上に刻み付ける。
版用の見当:
複数版で制作する場合は、下図の余白に「トンボテープ」を貼り、各版のフィルムにも同様に重ねて貼付ける。
これは重ねて印刷する時に、ずれないための工夫である。
紙用の見当:
版画紙と同じ質の紙に薄い両面テープを貼り、それを1センチ幅くらいで裁断し見当として用いる。
版画紙は、表面が肌理細かく起伏に富んでいるので、汚れやすい。汚れといっても眼で確認出来るものだけではなく、皮膚の油脂分やカビの胞子、微細な空気中の粒子などにもさらされている状況だ。
紙を直接つかんで扱うことは、極力避けたい。見当を合わせる時などはやむを得ないので、右写真のように人差し指と中指の側面で挟み取り回す。それ以外は、可能な限り紙バサミを用いる。