ここでは絵画やデザインを学ぶにあたって必要な、基礎的な色彩の知識を紹介する。











■混色による色の再現
 理論上無限に存在する色を再現するために有効なのは、限られた色どうしを混合して色を作り出す方法である。そのもとになる色は一般に原色と呼ばれる。原色は混色をして作り出すことができない有彩色と定義されるが、後に述べるように色を再現する媒体(インキや光)によって原色と呼ばれる色は違っている。絵の具の場合、赤、青、黄が原色(3原色とも呼ばれる)と一般的に認められているが、もっと広い意味では市販されている絵の具のセットに含まれている色、混ぜ合わせていない状態の色を原色と呼ぶこともある。また、混ぜ合わせる色の量を段階的に変化させると、ある色からある色への段階的に変化する色のバリエーションを得ることができる。このような段階的な色の変化をグラデーションと呼ぶ。





■混色の特徴
 「光と色」のページで述べたように、色には光そのもののもつ色(光源色)と、光が物体に当たって反射した際に生じる色(物体色)の2つがあり、それぞれ色を混色した場合に違った特徴を示す。光源色を混ぜ合わせた場合、混ぜ合わせた色はもとの色よりも明度が増す。このような混色を加法混色と呼ぶ。それに対し、絵の具やインキなどの物体色を混ぜ合わせると明度が低くなる。このような混色を減法混色と呼ぶ。以下にこの2つの混色による再現の例を挙げる。





・物体色による色の再現…印刷の場合
 印刷で色を再現する場合、まずインキを直接混ぜるやり方が考えられるが、この色のことを特色と呼ぶ。特色は色見本帳を使って指定することができ、インキ会社によってそれぞれ特徴のある色見本帳が販売されている。
 しかし、色ごとにインクを調合するのはコストが高くなり、あまり合理的でない。その代わりに考えだされた合理的な色の再現方法がプロセス印刷である。プロセス印刷はインキ自体を混ぜるのではなく、小さな色の点を掛けあわせることによって色を再現する、いわば視覚的な色の混合を利用した再現方法である。プロセス印刷ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の4つの色を使って全ての色を再現することができる。この場合原色(3原色)にあたるものはシアン、マゼンタ、イエローであり、理論上これで全ての色を再現できるが、3色の混合でできる黒は完全ではないため、独立した黒インクを加えた4色で行う。この4つの色のことをプロセスカラーと呼ぶ。一つの色はこの4色の混合であるので、C50%、M20%、Y0%、K10%というように4つの色の割合で全ての色を指定することができる。CMYKをどの割合で掛けあわせるとどのような色になるかは市販のカラーチャートを使って調べることができる。









・光源色による色の再現…モニター上の場合
 パソコンのモニターや、テレビのブラウン管上で色を再現する場合、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の光の3原色の混合で全ての色を再現する。RGBによる再現もプロセスカラーと同じく小さな色の点による視覚的な混合を利用したものである。24ビットフルカラーのモニターの場合、RGBそれぞれ256の階調を表わすことができ、例えばある色はR100、G50、B120などと表記される。パソコン等で印刷物を制作する場合、モニター画面に見える色はRGBで再現された色なので、実際に印刷される色とは違う。その色がwebなどモニター画面だけで使用するものなのか、印刷されるものなのか、再現する媒体によって色の見え方が違うことを考慮しておかなければならない。





■色の再現における注意点
 色の再現は、混色の割合だけではなく他の条件にも左右される。例えばプロセス印刷では印刷される紙によっても見え方は異なってくるし、モニター上の再現ではモニターの性能によっても左右される。特にwebのデザインにおいてはブラウザの種類などによっても見え方が違ってしまうため、比較的その影響を受けにくい216色がwebセーフカラーとして推奨されていることが知られている。また一つの色が全ての人に同じように見えているとは限らない。今日では障害や年齢等の影響による色の見え方の個人差も想定したデザイン、色彩計画を行う「色覚バリアフリー」という考え方も広まってきている。





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