武蔵野美術大学造形学部通信教育課程
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武蔵野美術大学 学長
甲田 洋二

■ 「美の力」を社会に浸透させるうえで、通信教育は大きな役割を果たしうる。

 武蔵野美術大学は、2009年に創立80周年を迎えます。この節目に当たって思うのは、今日ほど美術大学の存在意識が問われ、またその役割が期待されている時代はないのではないか、ということです。
  昨今の社会は、成果主義に傾きすぎているように思えてなりません。教育も例外ではなく、大学教育、高等教育においては、目に見える成果が評価の対象として強調され、初等教育や中等教育においても芸術教育を軽んずる傾向がなきにしもあらずです。
 絵を描く、モノをつくる、という造形活動に真剣に取り組もうとすると、それが容易に答えの出ないものであることに気づきます。そのために、描いては消し、つくっては壊し、という作業を延々と繰り返すことになります。私は、このプロセスにこそ大切なものが潜んでいると思うのです。
 造形活動においては、すでにある答えを見つけ出すのではなく、自分自身と深く対話し、自分自身で答えを見つけ出していかなければなりません。こうした絶え間ない作業の地平に、自然、あるいは他者に対する深い理解が育まれていくと思うのです。それは「美の力」といってもいいでしょう。
 本学の4年制通信教育課程は、今年で6年目を迎えましたが、昨年の卒業制作展は、まさに目を見張らせるものがありました。
開設当時に比べて、作品が格段の進歩を遂げているのです。それは決してテクニックの向上だけを意味するのではありません。「美」の本質に迫ろうとする、すがすがしい気概が感じられるのです。
 社会とさまざまな関わりを持つ、多様な人たちが集う通信教育課程こそは、社会全体に豊かな「美の力」を浸透させるうえで、計り知れない役割を果たしえるのではないでしょうか。そのような期待を、私は抑えることができません。

武蔵野美術大学教授 通信教育課程課程長
田中 克明

■ 美術系の通信教育は、可能性に満ちた新しい大学のスタイルとなっている。

 創造活動による日々の充実を求める人、資格の取得やキャリアアップを目指す人など、本学にはじつにさまざまな動機をもった人々が入学されます。最近特に目立つことの一つに、高度な専門教育を受け、専門職の仕事に就いていたり、美術やデザインの世界で仕事をしている人の多いことがあげられます。 自分の専門も究めつつ、もう一つの柱として造形力、表現力を身につけたい。そのような動機の意味するところとして、造形や表現というものが、それ自体の魅力はもとより、専門の幅を広げる上で欠かすことのできないベーシックなスキルの一つとして重要であるという認識があるのでしょうか。
  おそらく、造形力や表現力を多様な分野と関係づけながら、一方でその独自の魅力や役割をどう際立たせていくか、そのあたりに大きな意味があるのではないでしょうか。 このようなモティベーションの持ち方は本学通信教育課程の目指すところの一つであり、そのようなニーズに応えることは私たちの大きな課題です。
  もちろん、絵を描きたい一心で入学する人、美術家やデザイナーを目指している人も数多くいますし、芸術文化の研究を目指す人は、実技系科目に加えて理論系科目では他大学にない美大らしい内容と通信教育ならではの充実した教科書に魅力を感じて入学する人もいます。
  さまざまなスタンスの人が、さまざまな領域に関わりながら、共に学ぶ通信教育課程です。たとえば私の専門である生活環境デザインコースでは、鮫皮の加工業を営んでいる学生に、その実物を持ってきてもらい、製品化へのプロセスの話をしてもらったことがありますが、まさにプロダクトデザインの生きた教材であり、大好評でした。そうした「授業」ができるのも通信教育ならではの魅力です。また新しい表現の可能性を模索するために、専門をまたいだ学習を可能とする履修計画ができるのも本学通信教育の大きな特徴の一つです。これはもはや「大学の新しい学び方」のスタイルと言えるでしょう。 いずれにしろ、全く新しい「美大生」が育ちつつあり、本学通信教育の大きな役割と可能性を感じます。


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